離婚慰謝料を支払ってもらうためには、夫婦間での任意の離婚の話し合いの中で合意することができればよいですが、できない場合は以下のような手続きがあります。
①離婚調停申立
離婚調停をするときに一緒に慰謝料請求をすることができます。調停では、不貞行為や暴力などの慰謝料請求の原因となる事実について、証拠による証明は原則的には不要ですが、相手方が事実関係を認めていない場合は相手を説得するために、証拠を提出することがあります。調停で提出した資料が後に訴訟になった場合にそのまま証拠になるわけではありません。訴訟を前提とすると調停の段階で手のうちをすべて明かしてよいかどうかという問題もありますので、提出する証拠は十分に検討したほうがよいでしょう。もちろん、証拠が何もない場合もよくありますので、相手方に離婚の意思がある場合はできるだけ調停で解決したほうがよいと言えます。
また、慰謝料の金額についてははっきりとした決まりがあるわけではありませんので、婚姻期間の長さ(長ければ高くなる傾向にあります)、相手方の行為の悪質性・頻度などを勘案して決めることになります。
金額が合意できたとしても、相手の資力により支払える金額の限度もあります。支払い方法については、話し合いで決まれば、一括払いでも分割払いでも構いません。
②離婚訴訟提起
離婚訴訟を提起する場合には、離婚の訴えと併合して慰謝料を請求することができ、家庭裁判所に訴訟提起します。人事訴訟に係る請求とその請求の原因である事実によって生じた損害賠償の請求とは、訴えの併合ができることになっています。この場合、慰謝料請求に関しては通常の民事訴訟ですので、慰謝料を請求する側に立証責任があります。相手が事実関係を否認する場合は、物的、人的な証拠を複数集めて提出することになります。逆に相手が、慰謝料の請求原因に関する事実関係を認める場合は、証拠の提出は不要になります。その場合は慰謝料額がいくらが妥当かが唯一の争点となります。
慰謝料額については、和解による場合は当事者が合意した金額で(分割払いも可能)、判決による場合は、裁判所が裁判に現れた事実関係、証拠や当事者の態度など、すべてを勘案して判決で決めることになります。判決よる場合は遅延損害金を含めた一括払いが前提となります。訴訟による場合、当事者が請求している金額を上回って裁判所が判決することは絶対にありませんので、請求する側としては、相場よりもやや高めに請求することが通常です。
③離婚成立後の慰謝料請求
離婚が成立した後も慰謝料を請求することができます。離婚成立後は、不法行為による損害賠償請求として地方裁判所に訴えを提起することになります(訴訟による場合)。また、調停から始める場合は、家庭に関する事件についての調停として家庭裁判所に調停の申立てをすることもできます。
なお、離婚後、財産分与と共に調停を申し立てる場合は、慰謝料請求は財産分与とは別件として2件の事件となります。ただし、事件としては別ですが、調停は同一の期日では行われます。それぞれについて合意ができれば調停成立となります。調停が不成立となると財産分与については家事審判事項として当然審判に移行しますが、慰謝料請求については、家事審判事項ではないので審判に移行することはなく、調停不成立となり、手続は終了します。慰謝料請求については、調停終了後に別途民事訴訟を起こす必要があります。 なお、離婚慰謝料の消滅時効期間は、一般的には離婚成立から3年となっています。財産分与の除斥期間は、離婚の時から2年となっています。2年以内に協議や調停などで財産分与による財産を引き渡す権利が確定した場合には、その権利の期限は10年間になります。