法的に不倫相手に対して不貞行為の慰謝料を請求するためには以下のような準備・段取りが必要となります。
①不倫の証拠を確保する。
・配偶者と不倫相手とのラインやメールのやりとりがあれば、配偶者の携帯の画面を表示させて、その画面の写真を撮る。
・不倫相手と直接話す機会があれば、ボイスレコーダーで会話を録音しておく。ボイスレコーダーで録音していることを相手に伝える必要はありません。
・配偶者が不倫を自白している場合、ボイスレコーダーでこっそり録音しておく。弁護士が入った段階で言い分が変わる人も多いですので、録音は必須です。これらは相対している当事者間の会話ですので、こっそり録音しても通常裁判上で違法として排除されることはまずありません。
・配偶者の帰宅時間を毎日メモに控えておくと、どういうパターンで不貞行為に及んでいるかがわかる場合があります。
・知り合いや関係者の証言をとる。ひとつひとつは中身が薄いものでも複数集まれば十分証拠になります。
・最終手段としては、探偵を雇って写真付きの報告書を作成させる。ただ、過去の行動パターンから、配偶者が不貞行為に及ぶであろう日時が特定できればそれほど高額なものにはなりませんが、時期や時間が分からない場合は、探偵を例えば1週間張り付ける場合などはそれなりの費用がかかってしまいます。また、良心的で信頼できる探偵事務所を見つけなればなりません。
②不倫相手を住所・氏名を特定する。
不倫相手の住所、氏名が分からないと、慰謝料請求をすることはできません。ライン等で相手の下の名前しかわからない場合やネット等で知り合った場合は偽名の可能性もあります。もっとも不倫をしていた配偶者自身も相手の氏名を知らない場合がよくあります。このような場合は人物特定のために探偵を使うこともあります。
不倫相手の携帯電話の番号が分かれば、弁護士照会によって契約者の住所、氏名を調べることが可能です。ただ、弁護士照会は、調査の目的のためだけで利用することはできず、事件解決のために、示談交渉や裁判の前提として行う必要があります。すなわち、弁護士が不貞の相手方に対する慰謝料請求事件を受任して初めて調査することができます。
③慰謝料を請求する。
第一段階としては、弁護士が依頼者から事実関係を聞き取り、証拠を吟味した上で、依頼者を代理して不倫相手に対して書面(配達証明付の内容証明郵便)で慰謝料を請求します。内容証明郵便は、不貞行為の相手方の自宅住所に送ることになります。この点、職場に送ると名誉毀損等の問題が発生することもありますので、できるだけ控えるべきです。
慰謝料額をいくらにするかは重要な問題ですが、慰謝料額の多寡について一番重要な点は、当該不倫が原因で婚姻関係が破綻したかどうかです。破綻の最たるものは離婚ですが、離婚していなくても別居に至っていれば破綻ないし破綻に近い状態にあるとみてよいでしょう。このような状態であれば、交渉においては、通常300万円程度の請求になります。(もちろん、違法性の程度によって、金額は変わってきます。一度発覚した後、不貞の相手方が分かれることを明言したにもかかわらず、再度不貞行為に及んでいる場合などは悪質といえます。)ちなみに、家庭内の平穏を激しく乱されたが、夫婦の関係が一応修復している場合は、100万円~150万円程度を請求しています。
弁護士に依頼した段階で、示談交渉で解決できない場合は訴訟になることは予想されますので、相手方に訴訟を避けたい理由がある場合は、示談交渉で解決することもよくあります。
④訴訟提起
示談交渉で解決しない場合は、地方裁判所へ訴訟を提起することになります。相手方の住所地を管轄とする裁判所だけでなく、依頼者の住所地を管轄とする地方裁判所にも訴訟提起することができます。裁判の中で、相手方が事実関係を争わない場合(証拠が十分にあり、当事者の言い分の食い違いさほど大きくない場合)は、和解で終わることも多くあります。相手が不倫自体を争う場合もしくは金額面でお互い譲歩ができない場合は判決となります。相手方が事実関係を争う場合は、上記の証拠が重要となってきます。不倫が原因で離婚まで至っていれば、認容される慰謝料額は一般的には100万円から200万円程度が多いゾーンと思われます。
⑤不倫慰謝料請求の弁護士費用の目安
当事務所での不倫慰謝料請求の弁護士費用は以下のとおりです。印紙代、切手代、交通費等の実費は別途かかります。
交渉の着手金が10万円、報酬金は回収できた金額の16%
裁判の場合は、着手金20万円、報酬金は和解額、判決での認容額の16%です。交渉から裁判に至った場合は、着手金合計で30万円となります。